ミスト
Cyanが1993年に発表した記念碑的PCアドベンチャーのコンシューマー移植版。マウス操作を前提とした謎解き体験をセガの32ビット機へと持ち込んだ、CD-ROM時代初期におけるPCからコンシューマーへの移植の先駆けとなった作品。
説明
セガサターン版『ミスト』は、プレイヤーが神秘的な島「ミスト」およびそこから繋がる各時代(エイジ)を探索し、静止画で構成された画面を辿りながら環境パズルを解き、アトラスと彼の息子たちをめぐる断片的な物語を紡いでいくという、本作の根幹となるゲームデザインを忠実に継承している。移植にあたってはオリジナルの幻想的なビジュアルや環境音も維持されたが、ハードウェアの制約上、PC版と比較するとロード時間の増大や一部画像における圧縮ノイズが目立つ結果となった。操作系はサターンパッドに最適化され、方向キーで移動、ボタンでインタラクションを行う形式が採用されたが、マウス操作に馴染んだプレイヤーにとっては直感性に欠ける面もあった。
本作は日本国内におけるセガサターンのローンチタイトルであり、コンシューマー機への初期移植作品の一つに数えられる。発売時期を考慮すれば、パフォーマンスや操作性の面で独特の雰囲気が損なわれた点は否めないものの、PC版の体験をハードの枠内で再現しようとする意欲的な試みであった。90年代半ば、CD-ROMというメディアの普及により、『ミスト』をはじめとするアドベンチャーゲームがサターンやプレイステーション、3DOへと次々と移植された。今日から振り返れば、PC向けの名作をコンシューマーへ持ち込む際に生じた技術的課題と限界を象徴する、いかにも時代を感じさせる移植作である。