グランツーリスモ
Gran Turismo「リアルドライビングシミュレーター」という新たな概念を提示し、アーケードゲームの枠を超えた緻密な自動車の物理挙動と、仮想空間での所有欲を満たす深いキャリアモードによってレースゲームの定義を塗り替えた記念碑的タイトル。
説明
『グランツーリスモ』は、山内一典とポリポニー・エンタテインメント(後のポリフォニー・デジタル)のチームが5年におよぶ開発期間を経て完成させたタイトルである。当時、『リッジレーサー』のような派手なドリフト走行を売りにしたアーケードライクな作品が主流であった中で、本作はタイヤのグリップ、荷重移動、サスペンションのジオメトリが車両挙動に直接影響を与える革命的なシミュレーションエンジンを導入した。PlayStationのハードウェア性能を最大限に活かした緻密な3Dモデルと高度なライティングエフェクトは、ライセンス許諾を受けた140車種の再現に貢献した。日本国内では発売初月にミリオンセラーを記録し、当時の家庭用ゲーム機における技術的到達点を塗り替える歴史的成功を収めた。
本作の中核となるのは、本格的なキャリアシミュレーション「グランツーリスモモード」である。プレイヤーはプロのレースイベントに参加するために、まずはライセンス取得試験に挑む必要がある。限られた資金で中古の日本車を購入し、レースで賞金を稼ぎ、パーツをチューニングして愛車を強化していくという一連のサイクルは、かつてない自動車文化の追体験を可能にした。オイル交換や洗車といった細かなメンテナンスから、ギア比の調整や軽量化に至るまで、プレイヤーは自分の車と深く向き合うこととなり、これが後のシリーズに続く伝統の礎となった。
続編である『グランツーリスモ2』は、収録車種が約650台にまで拡大されラリーモードも追加されたが、本作『グランツーリスモ』が持つ技術的な安定感と設計の純度は今なお色あせていない。2枚組の大規模な開発となった『GT2』がハードの限界に挑んだ一方で、本作は「ハイスピードリンク」や「トライアルマウンテン」といった、その後数十年にわたりシリーズの代名詞となる伝説的なコースを生み出した。本作は、家庭用ゲーム機が当時PC市場の独壇場であったシミュレーションの王座を奪取した決定的な瞬間であり、その後のレースゲーム開発のあり方を根本から変えた金字塔である。
データシート
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