Watch Dogs (ANZ Special Edition)
都市そのものをプログラム可能な兵器として捉え、オープンワールドのジャンルにハッキングというシステムを持ち込んだ野心的なアーバン・スリラー。当時の他のサンドボックス系タイトルとは一線を画す、硬派なテック・ノワール調の雰囲気とタクティカル・ステルスを重視した作品。本豪州版パッケージには、限定DLCが含まれている。
説明
『Watch Dogs (ANZ Special Edition)』は、自身の過去の犯罪が招いた悲劇的な事件に復讐を誓うグレイハットハッカー、エイデン・ピアースの孤独な戦いを描く。物語の舞台となるのは、あらゆる市民の行動を監視し、都市のインフラを一括管理する中央オペレーティングシステム「ctOS」に支配された近未来のシカゴである。本作の空気感は徹底して冷徹で現実的であり、監視社会の闇やデジタルプライバシーの侵害といったテーマを、現実世界でそれが顕在化する以前に鋭く突きつけている。プレイヤーは常に何者かに見守られているかのような、逃れようのない力に支配されたスマートシティの影を舞台に行動することになる。
ゲームプレイの核となるのは、NPCの個人データや銀行口座、犯罪歴を瞬時にスキャンできるツール「プロファイラー」である。ゲーム内の環境をリアルタイムでハッキングするメカニクスにより、信号機を操作して交通事故を誘発したり、配電盤を過負荷にして即席の爆弾として利用したり、跳ね橋を上げて警察の追跡を振り切るといった戦略的な攻略が可能だ。カバーアクションを中心とした銃撃戦には「フォーカス」によるスローモーション機能が導入され、Ubisoft Reflectionsとの共同開発による物理演算に基づいたドライビングモデルが搭載されている。攻撃的なスタイルも可能だが、監視カメラを駆使して遠隔から敵を無力化するステルス重視のプレイスタイルが本作の真骨頂である。
本作の評価は発売当時、業界史に残る視覚的なダウングレード議論を巻き起こし、大きく二分された。E3 2012で披露された次世代のグラフィックに対する期待値に対し、2014年の最終的な製品版では特に日中のライティングやパーティクル表現が抑制されていたことが批判の的となった。主人公エイデンの無骨なキャラクター性も、当時のオープンワールドの主人公としては親しみにくいという声が多かった。しかし一方で、ハッキングを軸とした独自のゲームループや、雨の夜のシカゴが放つ圧倒的な大気感は高く評価された。特にプロファイラーシステムによって、ありふれた街の住人一人ひとりに個別の、時には不穏なバックストーリーが紐付けられた点は評価が高い。ドライビングの操作感には指摘があったものの、ハッキングとステルスを組み合わせた戦術的な深みは、ジャンルを革新した要素として広く認められている。
『Watch Dogs』シリーズは、その後トーンとメカニクスを大きく変化させてきた。シリアスで重厚な本作に対し、続編であるWatch Dogs 2は、舞台をサンフランシスコに移し、ドローンやラジコンといったガジェットを駆使する陽気な若者たちの物語へと舵を切った。さらに『Watch Dogs: Legion』では、固定の主人公を廃し、ロンドンのあらゆるNPCを操作可能にするという実験的な試みが行われた。シリーズ後の作品がハッキングの楽しさを拡張する方向へ進んだのに対し、本作は監視社会の暗部と孤独な vigilante(自警団)の voyeuristic(覗き見的な)緊張感を最も純粋に描き出している。今日において、その重厚なトーンこそが後の作品にはない深みであると再評価する声は少なくない。多くの課題を抱えながらも、全世界で1,000万本以上のセールスを記録し、シリーズの礎を築いた一作である。
データシート
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