ジーコ サッカー
Zico Soccerスーパーファミコンのライセンス戦略における最大のミスマッチとして知られる、悪名高い実験的失敗作。日本におけるアルトゥール・アントゥネス・コインブラ(ジーコ)の神格化された人気を背景に、スローテンポなカーソル操作によるコマンド式サッカーシミュレーションを仕掛けましたが、当時のアクション性の高いJリーグゲームを求めていた市場からは完全に拒絶されました。
説明
『ジーコ サッカー』は、当時の日本における「ジーコ・ブーム」の絶頂期に開発されたものの、ターゲット層の期待を根本から覆す結果となり、商業的にも評価の面でも失敗作の烙印を押された一作です。ジーコの名を冠した伝説的なプレイを期待して本作を手に取ったファンが目にしたのは、選手を直接操作する要素を一切排した、非常に冷徹で淡々としたマネジメントインターフェースでした。この設計は市場から即座に拒絶反応を招き、当時のサッカーゲームが持つ躍動感や、戦略シミュレーションとしての深みの双方を欠いていたため、またたく間にワゴンセールの常連となりました。
ゲームプレイの根幹は、スーパーファミコンマウスの使用を前提とした、鈍重なメニュー操作による戦術システムにあります。Dパッドによる直接操作ではなく、『ポピュラス』や『シムシティ』に見られるようなRTSの操作形態を模索していたのです。メニューを通じてセットプレイやパスコース、シュートゾーンを細かく指示し、それをAIが実行するという形式ですが、当時の欧州PCゲームのサブジャンルであった『Championship Manager』等の影響を強く受けつつも、コンソール機というインターフェースへの落とし込みには失敗しました。結果として、プレイヤーはスポーツの熱狂に浸るどころか、扱いにくいインターフェースとの格闘に終始する、苛立ちの募る受動的な体験を強いられることになりました。
『ジーコ サッカー』は、当時業界のスタンダードであった『Jリーグサッカー プライムゴール』や、頭角を現しつつあったFIFAシリーズと比較しても、プレイ不能な異端児として扱われました。ナムコやコナミがスプライトのレスポンスや直感的なフィードバックを駆使して16ビットサッカーの「リズム」を洗練させていた中で、本作は時代遅れで無機質に映ったのです。過剰な制作費を投じられながらも投げ売り状態となり、そのカートリッジが後に無許可の成人向けゲームの開発者に買い取られ、基板として流用されたという逸話さえ残っています。単純なコンセプトを過剰に技術化しようとした末の教訓であり、強力なライセンスといえども、根本的なゲームループが破綻していれば救いようがないことを証明する反面教師的なタイトルです。
データシート
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